鎌倉市の北に隣接する横浜市栄区は、かつて江戸時代は鎌倉郡に属し、中世は山内荘という荘園で北鎌倉と一体になっていました。さらに古代は鎌倉郡尺度郷の内にあったので、古くから鎌倉の中だったといえます。そこで何回かに分けてこの「知られざる横浜の中の鎌倉」を取り上げていきます。
栄区の特徴は豊かな自然が残っていることです。区内には横浜市内最大の円海山一帯の緑地があり、「横浜自然観察の森」をはじめ五つの「市民の森」と鎌倉に繋がるハイキングコース、いたち川流域のプロムナードなどが整備されています。
今回はその中の「いたち川」を紹介していきます。
☆「いたち川」の概要
「いたち川」は栄区を東西に流れる、古くから栄えたこの地域を象徴する川です。川の名前は鎌倉から「出で立つ」場所に位置するため、「出立川」→「いたち川」になったといわれています。室町時代に編まれた「鎌倉年中行事」にも、鎌倉公方が武蔵方面に出兵する際は、吉例によって「いたち川の宿」で昼食をとり、これからの安全を祈ると書かれています。また「徒然草」の作者として有名な吉田兼好は、この川を通った際「いかにして 立ちにし日より ちりのきて 風(かぜ)だに閨(ねや)を はらはざるらん」と、「いたちかわ」の名を歌に詠み込みました。
☆「いたち川川辺の道」
遊歩道の整備された「いたち川川辺の道」は、たくさんの木や花が植えられ、野鳥の姿も確認できます。また「扇橋の水辺」や「稲荷森の水辺」などところどころ自然の水辺が復元されており、かつての原風景を感じることができます。「矢沢堀小川アメニティ」には水車もあります。
☆四季折々の水辺
春の桜をはじめ紫陽花やツツジ、ケイワタバコやホタルブクロなど年間を通じて様々な花が咲き誇ります。水辺にはカルガモが泳いでいますが、季節によってオナガガモ・ゴイサギ・ホオジロも観れるようです。