北条氏の故郷、伊豆国田方郡北条を訪ねる

北条氏の故郷、伊豆国田方郡北条を訪ねる

2021年9月16日

 小冊子レキシノワ四号では、北条時政と北条一族の繁栄を「迫力の三つ鱗ヒストリー」と題して特集しました。ここでは実際に北条氏の故郷「伊豆国田方郡北条」を訪れた様子をレポートします。

〇最寄り駅は「伊豆長岡」

 北条氏が拠点とした一帯は現在、「北条氏邸跡」として整備保存されています。この場所を訪れるには、電車だと伊豆箱根鉄道駿豆線「伊豆長岡」が最寄り駅となります。ここから北西に向かうと「北条氏邸跡」があります。

〇北条時政建立の「願成就院」

 「北条氏邸跡」一帯は小高い山となっており、遠くからでも確認できるわかりやすい場所です。この小高い山の麓に北条時政が建立した「願成就院」があります。「願成就院」は文治五年(一一八九)に源頼朝による奥州合戦の戦勝を祈願して建てられたと「吾妻鏡」に記されています。境内には「北条時政公御墓」、寺宝に「北条時政公肖像」など北条時政ゆかりの史跡と文化財が伝わっています。この「願成就院」については次回詳しくレポートします。

〇「北条氏邸跡」

 「願成就院」の裏山の向こう側に「北条氏邸跡」はあります。この場所にはかつて鎌倉幕府滅亡跡にこの地に隠遁した円成尼が建立した「円成寺」がありました。このため別名「円成寺跡」とも呼ばれています。平成四年(一九九二)から翌年にかけての発掘調査では、平安時代末から鎌倉時代はじめと考えられる出土遺物と建物跡が見つかり、北条氏の館であることが確認されました。正面には駿河湾と修善寺方面に通じる狩野川が通り、この場所が交通の要衝だったことをうかがえます。

〇「北条政子産湯の井戸」

 「北条氏邸跡」から北東に向かった住宅地の一角に「北条政子産湯の井戸」と伝わる井戸が残されています。時政の娘として生まれた政子は、この北条の地で成長し、後に頼朝と恋に落ち、二人は結ばれました。そんな政子の伝承が伝わるのも、一帯が北条氏ゆかりの地だからだといえます。

〇北条氏と関係の深い「光照寺」・「成福寺」

 「北条氏邸跡」には源頼朝や北条氏と関係の深い「光照寺」や「成福寺」などもあります。光照寺は源頼朝の宿館跡に建てられたといわれています。成福寺は北条一族の建てた御寺で本堂北側には、北条氏一族の供養塔が残っています。

他にもこの地域には、室町時代後期に京都から関東へ向かった足利政知が拠点を構えた「堀越御所跡」や、北条早雲が居城とした「韮山城跡」、江戸時代の「江川太郎左衛門邸」や「韮山反射炉」などがあり、日本の歴史に登場する史跡が随所に残っています。