北条時政の菩提寺「願成就院」

北条時政の菩提寺「願成就院」

 小冊子レキシノワ四号では、北条時政と北条一族の繁栄を「迫力の三つ鱗ヒストリー」と題して特集しました。ここでは北条時政の菩提寺「願成就院」を訪れた様子をレポートします。

〇国指定の史跡「願成就院跡」

 境内に入る前に、向かって左側を進むと広場があります。ここに「願成就院跡」の石碑が建っています。願成就院は、昭和四十八年に境内を中心とする周辺一部地域を含め、「旧願成就院跡」として、国指定の史跡になりました。

〇石仏類

 願成就院に入る門の外や入ってすぐには、古い石仏類が遺っています。古の人々の祈りが伝わってきます。

〇北条時政公御墓

 境内に入って左側に「北条時政公御墓」が大切に祀られています。層を重ねた石塔は歴史を重ね、激動する時代を歩み続け、七十八歳で亡くなった時政の生涯を語っているように感じます。

〇国宝に指定されている寺宝の数々

願成就院に安置されている阿彌陀如来坐像・不動明王立像・矜羯羅童子立像・制吒迦童子立像・毘沙門天立像の五体の仏像は、胎内造像銘札によって文治二年(一一八六)、運慶によって造像されたことが確認されています。

 運慶は日本彫刻史上もっとも有名な仏師で、東大寺南大門の仁王像は特に知られています。その運慶の確かな造像が確認される願成就院の尊像は、鎌倉時代前期の東国文化を考える上で重要な意味を持ちます。

〇北条時政公肖像と本尊の阿彌陀如来坐像、地蔵菩薩像

 願成就院には北条時政唯一の像「北条時政公肖像」が伝わっています。金色の三つ鱗紋がはいった烏帽子と、龍が描かれた服を着て、毅然としたまなざしで見つめる像は、北条時政が英雄たるにふさわしい人物だということを感じさせます。

 また本尊に安置されている阿彌陀如来坐像は建保三年(一二一五)十二月に北条義時が建立した南新御堂の本尊、阿弥陀三尊像の中尊像だとされています。

 さらに通称北条政子地蔵と呼ばれる地蔵菩薩像は、北条泰時が北条政子の十三回忌頃に奉納したものを伝えられています。

 このように願成就院は、北条時政ゆかりの御寺というスケールを超えた、鎌倉時代の歴史と文化を伝える壮大な御寺なのです。